パヴァン王のこと | ハングルサクソン

パヴァン王のこと

喪に服しているときのパヴァン王は僕だ。最愛の人を失った悲しみを自分のものとせず、いつまでも悲しみに打ちひしがれていれば、いつかはその人が自分を哀れみ救いの手を差し伸べてくれると思っている大馬鹿者で意気地なしだ。自分が誰であり、誰を守るべきかをしらんふりしている悲しい人間だ。哀れみでしか最愛の人との繋がりを持つことができない、自己愛の塊がパヴァン王であり、僕だ。こんなに辛い僕を見てください。あなたがいなくなったおかげで僕はこれほどまでに悲しいのです。なんで僕の前からいなくなったの?なんで僕を一人にするの?なんで僕を?なんで僕が?反吐が出る。


それでもそんなパヴァン王をずっと見守る一人の少女、キラ。彼女は真に王の立ち直りを案じ、それでも王の人間性を最後まで信じぬく、前向きな心配性。健気で真摯な女性がそばにいてくれている、そんなパヴァン王が僕はうらやましい。パヴァン王のそれは愛ではなく、キラのそれこそが真に愛である。


そして旅人の助けを借りて最愛の人と再会し、自身を取り戻すパヴァン王。しかしいずれこの王は同じことを繰り返すのではないだろうか。どうしても他人の目に映る自分のことが気になるのは、性質として人が生きる過程で培ってきてしまったものである。そう簡単に直るようなら2年も喪に服すだろうか。あくまで物語のキャラクターであるから決して同じ過ちを繰り返すことはないだろう。最愛の人との別離を前向きに受け止め、この先の人生の糧として、決して同じことを繰り返さずに、王としての、一国の主としての役割と生を全うしてほしい。


それが僕の唯一の救いの姿なのであるから。